尊厳死の法制化に抗議

2月1日(水)
私、内田ひろきが所属する怒っているぞ!障害者きりすて!全国ネットワークが尊厳死法制化の動きに抗議し、厚生労働省に対して要請書を提出した。

以下に本文を抜粋。

「尊厳死法制化を考える議員連盟」は「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)骨子」(以下「骨子」)を作成し、今国会への法案提出を行う方針、と報道されている。
私たちは、この動きに対して怒りをもって抗議すると共に、「尊厳死法案」の提出を行わないよう要請する。 「骨子」では、「終末期」なる概念をかってに作り上げた上で、これを次のように定義している。
「この法律において「終末期」とは、患者が、傷病について行い得る全ての適切な治療を受けた場合であっても回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態にある期間をいうものとすること」。
これはびっくりだ!。開いた口がふさがらないとはこのことだ。ここには科学的、医学的観点は一かけらもない。したがって、なんの基準にも規定にもなりはしない。
そもそも、病気の種類や個々の患者の常態によって病状は千差万別なのであり、ひとくくりになどできない。「法案」では2人の医師によって判定するとしているが、明確な基準がない以上、思惟的な判断にならざるを得ない。
結果として、「終末期」の範囲は際限なく拡大される。さらに、「延命措置」を次のように規定している。
「この法律において『延命措置』とは、終末期にある患者の傷病の治癒ではなく、単にその生存期間の延長を目的とする医療上の措置(栄養補給又は水分補給の措置を含み、現に当該患者に対して行われている措置を除く。)をいうものとすること」この定義はきわめて大きな問題を含んでいる。
「終末期」という限定つき(上に述べたように、実際にはなんの限定にもならないのだが)ではあるが、「傷病の治癒ではなく、単にその生存期間の延長を目的とする医療上の措置」が「延命措置」だというのだ! これはとんでもない暴言だ!医療現場では、「傷病の治癒ではなく、単にその生存期間の延長を目的とする医療上の措置」はきわめて一般的に広く行われているのであり、これを否定したところで治療は成り立たないのである。病気を治すことはできないが、症状を改善したり、病状の悪化をできる限りくいとめるなどの治療は医療におけるきわめて重要な要素なのだ。
そもそも、「延命措置」といういい方の中に悪意に満ちたペテンがある。医療の現場で行われているのは「救命措置」なのだ。
その一部を思惟的に取り上げて「延命措置」と言い換え、あたかも「無駄な医療」であるかのような印象を故意に与えようとする許しがたい言い換えである。そして実態は、水分や栄養、酸素をも絶つ命の切捨てだ。これが実行されれば、患者を苦しめ、死に追いやる。このことを「尊厳」や「安楽」などという言葉で粉飾することは許されない。
誰かが自らのこのような命のきりすてを希望したとしても、私たちは「命が燃え尽きるそのときまで共に生きよう」と呼びかけ、その人生を支えるべきである。もし社会がそのような姿勢を失うとしたら、苦境にある人たちに死を選ばせ、生きたいと思う人たちも生きられない社会となってしまう。
●「尊厳死法」は命を切り捨てる優生政策
「回復の可能性」のない者や「延命措置」を否定的に論じるなら、人工呼吸器を必要とする仲間、透析を必要とする仲間をはじめ、障害者や高齢者の生そのものが否定されることになる。
この議員連盟と密接な関係にある「日本尊厳死協会」は、この法案に対して、「遷延性意識障害(持続的植物状態)も対象とする」ことや「延命措置」の中止をも規定するよう主張している。きりすての拡大が準備されているのだ。
「尊厳死」の考え方は優生思想そのものではないか!。「たくさんの医療機器に管でつながれながら生きていてもし方がない」「見苦しい姿になってまで生きていたくない」つまり、「『障害者』になったら殺してくれ」というものであり、「障害者」差別以外の何物でもない。「役立たず」として「障害者」大量虐殺を行ったナチス・ヒットラーと本質的にはなにも変わらないではないか!だいたい、「尊厳」は生きている人々にこそ保証されなければならないのである。「法案」を推進する議員たちは、障害者や高齢者が施設に隔離されている状況、精神障害者の社会的入院、地域における介助体制の不足、子供や高齢者への虐待の増加、毎年3万人を超える自殺者、1000万人に及ぶ「ワーキングプア」、原発労働者や福島の人々を放射能汚染にさらし続ける状況・・・人々の「尊厳」ある生活の実現のためにいかなる態度を取り、どのように責任を取ってきたのか!?「尊厳死」の考え方は、「臓器移植法」と並んで医療事態を変質させるものに他ならない。医療の大前提である「救命」をないがしろにし、命を救う医療から命を奪うそれへと医療を変質させていくことになる。そして社会的にも命をきりすてる優生思想を蔓延させることになる。
私たちは、「尊厳死」法制化の動きに強く抗議すると共に、「尊厳死法案」を国会に上程しないよう要請する。

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